そして 君は 恋に落ちた。

駆け足で駅の階段を上る。


瀬川君のことだ。

相手を知るために、ダッシュで私を捕まえに来るだろう。


―――全力で逃げてやるッ





まだ履き慣れないヒールに何度も転びそうになりながら、それでも足を進めた。


全ては、彼から逃げるため。



改札を抜けホームに出ると、ちょうど電車が来たときだった。

迷わず飛び乗り閉まるドアに体を預け、ひたすら息を整えた。



……何とか逃げ切れた…!


危うく松田君とかち合う所だったよね…。

今日の相手が彼なんて知られた日には……


「無理無理!絶対無理!」


想像しただけでも怖ろしい…!




しばらく電車に揺られていると、駅に着いた。


まだまだ乗っていたい気持ちを抑えつつ、ホームに下り立つ。と、同時に大きく深呼吸をする。


……よし! 行きますかっ!

< 65 / 378 >

この作品をシェア

pagetop