梅林賀琉
「それは恐れながら梅林様、いえ今の浦島様は現世に生まれ変わるずっと前の過去世に武家、つまり侍であらしたのでしょう。そして……」



ここにきて急に間が空いたので大事なことなのだろうと思った。



だが、早くその先を知りたいがためにぼくはさらにまた侍モードで問うた。



「何じゃ、勿体振らんではよ脱げ。お主も悪よのう。うへっ、へへへ」



どういうわけか、今度は気持ちの悪いエロ代官(ヨダレ付き)になってしまった。



海亀は暫し沈黙した。



「……何じゃ、可愛くないのう、黙っておるのだったらわしが脱がせてみせようホトトギス」



しかし、海亀は真面目に応えた。



「残念ながら、わたくしはこれ以上脱ぐことはできず、また男子の身であるがゆえにご期待に添えませぬ。それから、私はホトトギスではなく海亀に御座います」


「まぁ、それもそうじゃな。海亀ごときにこんなことを言うわしがうつけであった。失礼つかまつった。それでは、その先を御聞かせ願いたい」


「では、申します。その前はこの私を助けて下さった浦島太郎様に御座います」


「まことか」


「まことに御座います」


「何ゆえに」


「乙姫様の真言であるがゆえです」


「真言というのは仏の言葉か」


「いえ、乙姫様は仏ではありません。もとは天界の女人、天女に御座います」


「では、何ゆえ真言などという言葉を使いおったのじゃ」


「使ってみたくなったので御座います」

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