潔癖症の彼は、キスができるのですか?



先生は、はぁとため息をつく。


「階段で転びそうになって、受け身を取ろうと右手を出したけど、床には触れたくなくて頭からガツーンといったらしいわ」

「あ、頭から……」


大窪くん……。

そこは受け身とろうよ。死んじゃうじゃん。


「頭だから心配ね。早退して、病院でMRIを撮ってもらったほうがいいかも」

「はい……」

「山口さんはやっぱりまだ全身が痛む? 今日は早退する?」

「あ、いえ。私は親が迎えに来れないので。少し寝かせてください」

「いいわよ。大窪くんは、担任から保護者に連絡を入れてもらえるようにお願いしてくるから、ベッドに横になってなさい」

「……はい」

「毎日シーツは変えてあるから清潔よ。じゃあ、おとなしく寝ててね」


先生はそう言って、保健室から出ていった。養護教諭の先生にまで、大窪くんの潔癖症は知られてるんだね。


「頭、大丈夫?」

「うん。たんこぶできてるけど」


階段で転ぶなんて、よっぽど慌てたのかな。


……もしかして、私のこと追いかけようとしてくれたの?


なんて。また都合のいいほうに考えている私って、自意識過剰だよね。



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