潔癖症の彼は、キスができるのですか?
あいつ、友達?



決戦の二日目。今日で問題をキレイに解決して、大窪くんと堂々と手を繋いで帰るんだ。


だから早起きして、私は学校には向かわず、あの夏樹って男の子の学校に向かった。あの制服は確か、県内でも有数の進学校。あんなチャラい風貌と性格のくせに頭はいいんだ。校則も厳しい学校で有名なのに。本当に謎な男。


「だけど、会えるかが問題なんだよね……」


ため息をつきながら、ヤツの学校近くのコンビニ前で待機していると。


「あれ~琴音ちゃんだ~」

「ええ⁉」


顔をあげると、ヘラヘラ笑っているムカつくしゃべり方のあの男! ケバマツゲにキス五千円で買収された夏樹がチュッパチャップスを咥えて、立っていた。てか、すごいミラクル。まさかこんなに簡単に早く会えるなんて思っていなかった私は、間抜けな声を出してしまった。


「学校、逆じゃん? ああ、もしかして、彼氏と別れたから俺に会いにきてくれたとか~?」

「違うわ。あのキス写真、どうしても削除したいの。夏樹くんからケバマツ……道岡さんにお願いしてくれないかな」

「いくらで?」

「え?」

「俺、タダでは動かないよ~」


そうきたか。うち、おこづかい制じゃなくて、ほしいものがあったらお母さんに言ってお金をもらっている。嘘がつけない私がお母さんからお金をもらえないのは目に見えてる。私は鞄の中から財布を取り出して、夏樹にありったけのお金を差し出した。


――チャリン。



「……183円?」



ああ、今日は飲み物が買えない。でも、一日くらい我慢しよう。私が落ち込んでいると、夏樹はプッと吹き出して、ゲラゲラとお腹を抱えて笑った。






 
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