潔癖症の彼は、キスができるのですか?
「大丈夫?」
「うん……」
教室を出てから、ずっと俯いたままの私に大窪くんが声をかけてくる。だ、大丈夫なわけない! あ、あんな洋画に出てきそうな濃厚なキスをされて。我に返ると、恥ずかしくてしょうがない。
「大丈夫じゃないみたいだね。ごめんね。山口さんがかわいいから、つい……」
「ほ、本当に大丈夫だって!」
「ま、おかげで、リップの色はお互い取れたけどね」
かあああああああ‼‼
一気に顔が赤くなる私。大窪くんを睨むとクスリと意地悪に笑った。
「やっと、目合わせてくれた」
「意地悪!」
「桃のゼリー以外にも何かおごるから、機嫌なおしてよ」
そう言われて、差し出された右手。私はドキドキしながら、その手を掴んだ。やっと、きちんと手を繋げた。
そのことが、嬉しくて機嫌なんてすぐなおる。