君へ・・・
君へ
僕はお世辞でも素直と言えるような部類の人間ではない。

それは、もちろん彼女の前でも同じ。
と言うか、彼女の前の方が素直になれなくなる。

いざという時になって強がりが発動して君に「好き」の二文字も言えない。
でも、これは強がりと言うよりも怖がっていると言った方が正しいのかもしれない。
もし僕だけが好きだったら?僕の独りよがりだったら?そう思うと全てが怖くて想いなんて伝えれなくなる。

相手の背中を見るのは怖い。
置いていかれてるようで、自分だけが必死なようで、情けないような、バカらしいような、そんな気さえしてしまう。

こんな性格は手紙の上でも変わることはなかった。
君と何気なく始めた手紙交換。
紙の上でなら素直になれるかな、なんて考えてた。
でも、結局は考えだけに止まって、実際素直になんてなれなかった。

君との手紙のやり取りはいつも楽しくて、紙に記された君の可愛らしい丸文字が、君がならべた言葉が僕を笑顔にしてくれる。

君の手紙には、いつだって「好きだよ」の文字
それにさえ応えられない僕はとんだ臆病者だ。

彼女からの嬉しい言葉に応えられない方がよっぽど情けなくて、バカみたいだってことくらい自分でも理解しているつもりなんだ。
それでも応えないのは、裏切られた時のショックを和らげるためだった。

いつも受身で、好きな相手さえ信用できない僕は、そんな自分を責め立てて、自己嫌悪して逃げ道をたくさん作っていた。


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