形見
「行こっか」
膝下に手があてがわれ、体がふわりと浮いた。
要が腕を首にかけてから、十希は部屋を出て歩きだした。
チリチリと簪が鳴る。
その音に、やがてざわめきが混ざり始めた。
「ヒトガタだ」
「あんた、何お願いするんだい」
「相変わらず別嬪さんだよ、要は」
今年も、両親は来てくれているだろうか。
最初の年、両親を見つけてぽろぽろ泣き出した要を、十希は懸命になってあやした。
次の年から、両親の姿を見なくなった。