形見


問い詰めれば、要に泣いてほしくないのだと、自分が泣きそうになりながら十希は言った。




親を見れば帰りたくなる。



十希は要を帰したくないのだ。



要に見つからないよう、こっそり来るように親には伝えたそうだ。



要が覚えている姿より、七年老けているはずの両親。



女装して男の膝に抱かれる息子に、まだ会いに来てくれているだろうか……。




「ねえ、要、こっち向いてよ」



拗ねた声に、要は人の群れから視線を上げた。



「呼んでるのに」



むうっ、と膨れるヒトガタがいた。


< 26 / 31 >

この作品をシェア

pagetop