ウシロスガタ 【完】
「ご指名ありがとうございます。こちら冷夏サンです」



ボーイの声がする方に、俺は目をやった



さっきまでの自分だけへの冷夏の笑顔にドキドキしていたはずが、



今は他の男のものになってる……



「ちょっと酒、濃いめにしてくれる?」



俺は残ってた酒を飲んで、優菜にグラスを渡した。




「……ったく!これだからさとみてぇ~な奴はキャバクラなんて駄目だな」




先輩の笑い声が俺の冷静さを壊して行った



「うるさいっすよ!」




冷夏の声が聞こえる度に、胸が痛み、俺は冷夏から貰った名刺をもう一度見た。




「さと!出るか?」




「いや、いいっす!先輩楽しんで下さいよ~。」




本当は、俺の隣にいなくても…




冷夏と同じ空間に



ただ、いたいだけだった。





店も終わりに近付き、音楽が店の中に響き渡った。


「おっ!ラストソングが流れたかぁ…じゃあ、そろそろ行くか?」




「………。」



「おい?さと…?」




「あ!はい!なんすか?」



「何をボーッとしてんたよ…行くぞ!そろそろ。」




「はい……」




俺は最後に冷夏の俺じゃない客に見せる笑顔を見て、ポケットに入ってる名刺を握りながら店を出た。




「ありがとうございました!!」
「ありがとうございました~!!」




その声を最後耳にし、
現実の扉を開けた―――。







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