ウシロスガタ 【完】

怒り



「今日は幸せだったな」

俺の車の中で寂しそうに冷夏が呟いていた。



もうクーラーなんてかけなくても夜中の風は少し肌寒くて俺は窓を全開にして車を走らせていた。


「冷夏がいなくなった自分の部屋に帰る俺はもっと辛いぜ?」


「気持ちぃー!!」


「おい?聞いてる?」



俺の話しが冷夏の耳に届いたのかさえも分からず冷夏は窓から顔を出し風を感じていた。



「聞いてねーしな」


「えっー?なんか言ったー??」



大きな声で風を感じながら言う冷夏の姿に愛しさを感じ、自然と笑顔が零れた。


「本当に子供みてぇーな奴っ!!」



なんだか冷夏といると俺も懐かしい気持ちになれた。


まだ汚い世の中を知らなかったあの頃の自分に自然とタイムスリップしているような、そんな気持ちになれた……
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