ウシロスガタ 【完】
ーー♪~♪~♪♪~♪ーー



俺のポケットから、ふざけた着信音が鳴り始め、電話をかけてきた相手もすぐにははくした。





涙を拭いながら、俺は唾を飲み込み通話ボタンを押した。



「なに?」



その瞬間……



電話の向こうから聞こえてきたのは、俺と冷夏の好きなアーティストの曲。



思い出の曲……



冷夏を知らせるメールの着信の設定してる曲。



それは、冷夏も真似をして俺を知らせる着信音に設定していた曲だった。




「マジ、うぜ~から……」



そう言いながらも、さっき拭った涙が、地面にポタリと落ちた。



「あ、ごめん!さと電話出てた?」



こんな風なやり方しか出来ない不器用な中西に、なぜだか言う言葉が見つからなかった。



冷夏がいつも俺の車の中で口ずさんでいた曲。



それが、とてつもなく切ない曲に聞こえるのはなぜだろうか……



「さと?おい!!」



「マジ、うぜ~なお前って……」



「なにがだよ」




「流すんじゃねーよ!!」



「はっ?意味わかんね~」



そう言いながらも、後からリピートしている曲になぜか聞き入っていた。



「俺、冷夏を愛してる……」



「あ?ってか、頭やっぱりいっちまった?電話の相手を間違ってね~か?」



「だからこそ、もう限界なんだ」




「さと、でも……」
「冷夏を責めてしまって、傷つけてばかりで……」




「でもよ……」
「なのに、あいつはいつも笑ってんだよ」




「って、聞けよ!!人の話しを!!」




大きな怒鳴り声が俺の耳元で聞こえた瞬間、



やっと必死になって動いていた俺の口は止まり、中西へと耳を傾けていた。










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