ウシロスガタ 【完】
窓を開けるとひんやりした風が入ってきていた。



1か月前の今頃はとてもじゃないけど、暑さが入り込むと思うと


車の中で窓を開ける気さえならなかったのに……。




季節が変わりゆくことが寂しく思い、1か月前のことを思い出していた。



ちょうどその頃、俺は冷夏から結婚という真実を突き付けられ苦しんだ。




それでも、“冷夏と離れたくない”そう心から思っていた。


だけど、本当は一緒にいない時俺の心は、狂ってばかりで、いつも旦那に嫉妬し羨んだ。


また勝ち誇ったこともあった。



冷夏の気持ちは俺にある!そう何度も勝ち誇ったけど……


冷夏がいなくなってからは、その虚しさに負けた。




結局、俺は旦那以上にはなれないのだろうか……


好きとか愛とか、それ以外の繋がりに俺は勝てないのだろうか……


そんなことばかり考えていたら、無性に腹が立ちシートから離れ、ハンドルにもたれかかり、車の中から空を見上げた。




繋がっているのだろう……



この広い空がある限り、冷夏と俺は繋がってるはず。



冷夏が空を見上げれば、この青く澄んだ空が俺と同じ眼に映るはず。




雲がはっきりと白く上手い具合に空の青さに馴染んでいる、



大きな空はそれを受け止めているかのようにも見えた。



“俺も、この空のように広い心で冷夏を受け止めることが出来ていたなら…”



そんなことを思いながら、車から覗いた空から目を放しハンドルに顔を伏せた。








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