ウシロスガタ 【完】
「話すことないよ」



友達の言葉に咄嗟に出てしまった俺の言葉に


冷夏は一瞬だけ俺の方を悲しそうに見て、また目を反らした。




重かった空気が一段と重くなり


なんだか俺はイライラしてた……



俺が見たことのない冷夏の酒に呑まれている姿に。



仕事でも、こんな姿になったりしてんのか、


だけど客たちは、こんな冷夏の姿を当然、見たことがあるのだろう。





俺が知らない冷夏の姿がまだあったことに、


そして俺の知らない冷夏の姿を他の男が知ってることに、なんだかムシャクシャして、



冷夏と逢えた喜びよりも、なぜだか自分の醜い感情のが勝ち




俺の表情は強張って行くのが自分でも分かった。







そして、冷夏が一瞬見せた悲しい瞳の裏側を



俺は知る由もなかった……。
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