ウシロスガタ 【完】
「ちょっと待ってよ…」




複雑な雰囲気の中ずっと黙って飲んでいた恵梨が口を開いた。



冷夏は、なにも言わずに顔を上げ、恵梨の方を見つめていた。



「なに?」



ちょっと苛立ちを隠せない恵梨の言葉に、俺もさっきの苛立ちの延長戦で無愛想に答えた。



「つーかさ、だったら何しに来たの?話しがあったから来たんじゃないの?」



間違いなく、俺を攻めてる恵梨に抑えきれない苛立ちをぶつけた。



「別に……」



「なんなの?それ、話すことないならなんでいるんだよ!!つーか、別れたんじゃないの?」



「あぁ、だけど……」



「だけどってなんだよ!!話しがあるから来てんでしょ?だったら話しなよ!!終わっていいの?」



「………」



「冷夏は?ちゃんと自分の気持ち言いなよ?」



「うん……」



その瞬間、一瞬だけ冷夏と目が合った気がしたのは、俺だけなのだろうか……。




「あ~!!もうじれったいな!!ちょっと電話してくるから」




そう言いながら、俺たちの席から恵梨はいなくなった。





2人きりにした方がいいと、気をつかってくれたのがすぐに分かったが“この雰囲気をどうしろって言うんだよ!!”なんて自分に語りかけていた。





恵梨がいなくなった空間は、さっきよりも増して重い空気が漂い、息をすることさえ苦しかった。




見えない冷夏の表情……



さっきの悲しそうな瞳……



そんな顔をさせているのは、紛れもなくこの俺なのに、



なぜだか、人事のように俺は下を向き顔を伏せていた。









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