ウシロスガタ 【完】
「冷夏が初めから結婚してると分かっていたなら、俺は好きにはならなかった……」



俺は、なにを言ってしまったのだろう……



冷夏の目から涙が零れていた。



「最低な男っ!!!こんな男となんか別れちゃいなよ!!」



そう、恵梨が冷夏に向かって言い放っているのを見て、俺はマズイことを言ってしまったのか……と、頭を抱えていた。




頭の中が混乱していた。



冷夏は俺を視界に入れないように、涙を零し続けて、恵梨は俺を睨んでいた。




「………でも」



「えっ??なに?」



言葉になってない冷夏が発した単語に、恵梨が聞き返していた。




「それでも、冷夏は好きだから……」




俺は顔を上げられなかった。



ここで、冷夏の顔を見てしまったら、きっと涙が零れる……




そう思っていたから。




だけど、俺の目からは、我慢していたものが零れだした。







視線を反らした先に、それははっきりと俺の目に焼きつけられて



勝手に涙が零れた。








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