冷たい世界の温かい者達
『朔、朔』
小さく声が耳に届いて、薄く目を開けると、由薇が既に着替えた姿で居た。
『もう8:30だ。
そろそろ起きないとヤバいぞ?』
「あぁ……」
寝起きのせいか、少し掠れた声が出た。
それに由薇はケラケラと笑って小さめのショルダーバッグを肩にかけた。
「……あぁ、山登りか…」
そう言いながら上半身を起こすと、由薇は持っていたらしい水を俺に渡した。
…飲みかけ。
間接キス、とかこいつは気にしなさそうだな、うん。
俺も全く気にしないから平気で飲んだが。
『もう全員着替えてリビングに行ったぞ』
「あぁ…俺もすぐ行く」
そう言うと、由薇は頷いて部屋を出て行った。
……めんどクセぇ。
先のことを考えて溜息を吐いて、着替えを取り出す。
黒のタンクトップに半袖の上着、ジーンズを履いて部屋を出た。
リビングへと向かうと、全員がぐだっと座っていた。
「やっと来たっ」
頬を膨らませた衣緒に、煙草を擦り潰した成一は立ち上がって、千尋の頭を軽く叩いた。
パソコンから目を離した千尋は不満そうに成一を睨んでから舌を打った。
影助もあくびしながら立ち上がって、「行くか」と声をかけた。
由薇が寄って来たかと思うと、俺に袋を渡した。
「何だ? これ」
『お弁当。
山行くのに何も持ってかなかったら確実に死ぬよ』
冗談めかして笑った由薇につられて笑いながら、頼んでそれを由薇のバッグに入れてもらった。
バッグなんて持って来てねぇし。
全員分あるらしく、それは由薇が作ったそうだ。
……早く食べたい。