冷たい世界の温かい者達
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『……』
女は起き上がり、眠りについている男の頭をゆっくりと撫でた。
その大きな骨ばった手がいつも彼女にしていたこと。
それが彼女にとっては心地よくて、とても好きだった。
『……バイバイ』
彼女はゆっくりと強く握られていた手を一本ずつ離して服を拾い上げた。
男は既にジーパンとTシャツを着ていて、そのまま彼女は携帯を取り出した。
『……あぁ。 私の部屋に居る男を起こさないように柏原の敷地に置いてやってくれ』
彼女はそう電話で告げると、男に目を向けてから踵を返した。
彼女の頬は、父の葬式でも見せなかった涙が静かに流れ落ちていた。