オジサンが欲しい
……そう物思いにふけっていた時、出入り口のドアが押し開かれる。
コンビニエンスストア特有の来客ベルが鳴り、寺尾は「いらっしゃいませ」と小さく声を張った。
やっと入ってきた来客は、見慣れない女子高生だった。
紺色のブレザーに、チェックのリボンとスカート。
胸には、銀糸で縫われた六角形の校章が光っている。
有名進学校の制服だ。
懐かしい。
寺尾は頬をほころばせた。
いまはすっかり制服が変わってしまったが、その高校は寺尾の母校でもある。
進学には金がかかるため就職を選んだが、とにかくいい仕事に就こうと努力を惜しまず、必死に成績を上げて行ったのを覚えている。
見れば、菓子コーナーでチョコレートかキャラメルかで迷っている彼女は、大人しそうな顔立ちに清楚な黒髪と、いたって真面目そうな女子高生である。
人をあまりじろじろと見るのは、我ながら感心しない。
しかし母校の生徒だと思うと、つい、どんな生徒なのだろうかと考えてしまう。