はじめからおわりまで
そんなどうでもいいことを考えつつも、迷惑をかけないようにしっかり練習はする。気が乗らないとはいえ、せっかく私を必要としてくれる人がいるんだから役には立ちたい。


「ゆな?」

急に南に覗き込まれる。声はよく聞こえなかったけど、口の動きから名前を呼ばれたような気がした。

「なに?」

「そろそろ合わせよっか。大丈夫?」

もちろん。
自信満々に頷くと、南は笑顔になる。

「やっぱりゆなは笑ってるほうがかわいい」

そんな南の独り言は私に届くこともなく、相変わらずの騒音にかき消された。

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