私は彼に愛されているらしい2
何を言ってるのだこの酔っ払い、そう続けようとしたけど出来なかった。

「有紗。俺と結婚しないか?」

あまりに強烈な攻撃にさっきまで大声で聞き返せていた有紗は急に声を失ってしまった。しかし口の形は間違いなく、はあ?と聞き返している。

状況把握には時間が必要だと静かに視線を泳がせ動揺の持っていき場所を探した。

血の迷いだ、深酒の為せる業だ、もしくは最悪の絡み酒だ。

ふと視界に入った手の輝くネイルに思いを寄せてため息が出そうになる。ほんの数時間前は女子力アップだと綺麗に手入れをしてもらったネイルを見て幸せな気持ちで満たされていたのに。

あてられたにも程がある。というかあてられすぎだろうと、哀れにさえも思って泣きたくなった。

それは駄目だよ、大輔くん。

「大輔ちょっと飲みすぎて…。」

「俺、本気。」

か細く抵抗しようとした声は見事に強い口調に負けてしまった。

何も言えずに目だけが泳いで必死に現状を理解しようと必死になる。本気って自分に結婚を申込むのが本気だと言っているのか。じゃあ電話の最初の宣言はまさに予告だったということか。

え?なんで私?

よく分からない状況に陥られ有紗の背中には冷汗がじわりと出始めていた。

これは現実?

心臓が駆け出して心拍数が一気に上がっている。顔も、熱い。

もしこれが本気だったら

「有紗。」

名前を呼ばれただけなのに肩が震えて全身から汗が噴き出しそうになった。今まで一度も無かった感覚にすっかり翻弄されている。そんな自分にも戸惑った。

ヤバイ、なんか逃げ出したい。

携帯を持つ手も震え、混乱からか息苦しくなってきたような気もして有紗は手で口を覆う。

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