私は彼に愛されているらしい2
微妙な感情が交錯する中で有紗は反射的に尋ねてしまった。

「あんたこの機会を逃したら本当に10年先、それか一生結婚できない。私もそう思う。だって有紗は結婚願望がないんだもん。」

「え?」

結婚願望がない、舞の言葉に強い衝撃を受けた。

女子力を意識していた自分が、恋愛が枯渇しないように努力してきた自分が、本当にそんなことがあるのだろうか。

しかしどこか納得している自分がいることにも有紗は気付いていた。

「友達の結婚式に参列したって羨ましくは思ってもその日止まりでしょう。いつかは自分もなんて妄想したことないんじゃない?その辺ドライなのとは違うからね。そういうのを結婚願望がないって言うの。」

「そんな…。」

そうは答えてみるものの、府に落ちていく奇妙さは誤魔化せない。

有紗だって分かっているのだ。だからこそこれ以上は聞きたくなかった。

見たくなかった自分と向き合うには心の準備が出来ていない。

どれだけ自分の中で後退りしても背中に当たる壁が行く手を阻んだ。

「適度に強さを持っているのは羨ましく思うけど、こんなところでそんな強さを発揮しなくていいのよ。あんたのことだから彼氏は欲しくても結婚相手なんてこと意識しないでしょ。まあ多少意識したとしてもそんな大したことじゃない。いいとこ給料とか休みがあうかとか?」

耳は塞げない。

すぐ傍で見守るみちるの視線がそれを許さない気がして手が震えた。

向き合えというのか。

「結婚を意識するってのはそんなことじゃない。その人との未来、子供、いろんなことを考える事。あんたのはそれがないの。」

1つ、また1つと駒が舞の手で詰め寄ってくる。

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