私は彼に愛されているらしい2
確実にルールに乗っ取って正当に近付く足音は必要以上に有紗の気力を奪っていった。

「願望がないあんたはこの先誰が恋人になったとしても自分から結婚しようとは思わないし、言わないと思う。恋人がいないままだって、有紗はうまいこと同じ様な友達作って仲良くやるんでしょうよ。結婚なんかしなくてもいいって。あんたは容量がいいから。」

「私って容量良いんですか?」

「そう。腹立つくらいにね。」

「…腹立つ…。」

どうしてそう尋ねたかは分からないのに、更に付け足された舞の言葉で有紗はまた落とされていく。

「前に自分は結婚できない気がするなんて言ってたけど大した思いも抱えずそう言ってるだけなんでしょ?まだ有紗が若いからっていうのもあるけど、本当にそう思っている人は口に出せずに抱えているもんなのよ。誰にも言えずに一人で戦ってるもんなの。若いって言っても社会人4年目にもなれば若さなんて無いに等しいわよ、もう少ししっかりしてくれないと。」

きっと今の言葉を2年前に言われていたら有紗は泣いていただろう。

しかし今の有紗にそんな思いはなかった。

悲しくはない、悔しくもない、感情が何もない。

全てを否定されて無気力になった体がそこにあった。

取り残された、そんな言葉が浮かんで止まってしまう。

「舞さん。」

何も言い返さなくなった有紗の様子を心配してみちるは舞の名を呼び止めようとする、しかし無駄だったようで舞の言葉は更に続いた。

「有紗。ここで結婚に向き合わなきゃ本当にこの先無いよ。逃げ癖が付いたらもう抜け出せない。結婚てそんなもんなの。」

ねえ、みちる。そう同意を求められたみちるは苦笑いでしか答えることが出来なかった。

表情のない有紗の変化に舞は気付いているのだろうかと不安になる。

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