私は彼に愛されているらしい2
この慌ただしさは通常通りの景色かもしれない、しかし全てが自分の起こした事態の様な気がして居た堪れなくなった。

何をやってるんだ。自分が情けなくて惨めになる。

挽回しようという気持ちも沸かないまま流れる様に自席に戻って誘われるようにメールを確認した。

今日は会議もない、図面修正の業務が手を離れた今はデスクワークしかない。

つまり逃げ場所はない。

大きな迷惑をかけてしまった後悔と自身への嫌気が増してどうしていいのか分からなくなってしまった。

こんな自分は嫌いだ、捨ててしまいたいとさえ考えたのはどれくらいぶりだろうか。

どれだけ大きな心配をしてもここまで深く抉る様な感情にはならなかったのに、力を入れて拳を握りたくても僅かでさえ指を動かす気力もないなんてどうかしている。

唯一の逃げ場でもある職場を失い、有紗はもう目の前が真っ暗になったようだ。

浮け。

気持ちがこれ以上沈まないように胸の内で唱えてみるが闇に飲まれていく。

「暗い。そんなところで落ち込まれると迷惑。」

無意識の内に頭を抱えていた有紗へ東芝から冷たい言葉を突きつけられる。

いつの間に席に戻っていたのだろう、さっきまで無かった筈の姿が向かい合わせの席に座っているのが見えて視線を落とす。

痛い言葉だ、しかしこれが東芝なりの励ましだということに今の有紗は気付けなかった。

「…はい。」

力なく立ち上がると有紗は小銭入れを持って売店へと歩き出す。

特に意味のある行動ではなかったが出て行けと捉えてしまった有紗には他にどうしようもなかった。

不器用だが心配そうな眼差しを向ける東芝の気持ちにも気付かない、同じように見守る上司にも君塚にも気付かない。

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