私は彼に愛されているらしい2
大したことも無いと思ったのだろう、すがる様に西島に寄っていた体は堂々と有紗の方へ向き直していた。

「あんたさっき偉そうに吉澤に言ってたじゃないの。実は普段からうっぷん溜まってたんじゃない?」

「そうよねえ?あの人本当にお節介というか大きなお世話っていうか、いちいち煩いじゃない。」

「持田さんがあの人にお灸をすえてくれたから私たち嬉しかったのよ。」

2人のが一体何の話をしているのかすぐには理解できなかった有紗は眉を寄せて自分の中の記憶を掻きまわしてみる。

ようやく見つけた可能性が工場に行く前に舞に告げた言葉だった。

仕事の話をしてもいいですか。

有紗のプライべート話を聞き出そうとする舞に対して言ったことがどうして彼女たちに喜ばれるのかは理解しがたい。

「舞さんが言い負かされたから、ですか。」

口が達者な舞には普段から西島も適当にあしらわれたり言い負かされることも多かった、その腹いせまでとは言わないが有紗にやられたと聞いて西島はほくそ笑んだのだろう。

「そう。その場にいなかったのが残念だわ。」

「本当ちいさい人間ですね。」

「何ですって!?」

「野望ばかりが大きくなって他人任せにし過ぎなんですよ。これじゃお局扱いされても文句言えないでしょ。」

呆れ口調で物言えばたちまちに強反応を示した西島が握りしめていたマスカラを化粧ポーチに投げ入れた。

徹底的にやりあうと決めれば作った笑顔や態度は不要らしい。

「大人しく聞いてりゃ…あんたそれが先輩に対する態度!?設計士だからって偉そうにするのも大概にしなさいよね!」

「入社して何年たっても補助ありっておかしいんじゃない?とっくに独り立ちしているのが普通でしょうが。」

「人の事を仕事出来ないとか好き勝手にいってくれて…てか、あんただって吉澤がいなけりゃ何にも出来ない似非設計士のくせに!」

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