私は彼に愛されているらしい2
有紗は脇に挟んであったクリアファイルの中から3D画像を印刷した紙を出して西島に見せた。

それは何てことない車内の設計の一部分を映した画像、西島は目を凝らしてその答えを探している、しかし上手くいかなかったようで表情を歪めた。

「一案でも浮かべば先輩は設計が出来ます。あとは体験で本で知識を増やせばいいだけ、私は先輩ならそれが出来ると思います。先輩からは頭の良さが伝わってきますから。」

「…どこが。」

「コピーの取り方1つでも分かりますよ?見る人が見れば分かります。先輩は変に頭がいいから周りのレベルを低く感じてやる気を無くしてるんですよ。」

自分にも身に覚えのあることを思い出して有紗も目を細める。こと西島は馬鹿ではないから厄介でここまで自由に出来たのだと理解している人は多いのだ。

「舞さんと先輩の違いなんてやる気があるか無いかです。何もやる気がないのなら、さっさと結婚相手和見つけて辞めればいいのに。」

「出来ないからまだここにいるんでしょうが。」

「やる気のない曇った人間に魅力を感じる人なんていませんよ。外見だけ磨いたって心が曇ってれば誰も寄ってきません。よっぽど利害関係が成り立たないと。」

「さぞかし貴方はそれが出来ているんでしょうね。指輪はもう無いようだけど?」

ため息を吐きながら仕返しだと西島は飾り気のない有紗の手を眺めて眉を上げた。しかし有紗はその視線の意味を理解すると首元からネックレスを取り出して指輪を服の上に出す。

「ここにありますよ。」

「はあ!?あんた指輪隠して他の男を弄んでた訳?」

「弄んでませんて…。仕事に集中したら何ですかその噂は、工場は貴金属禁止なんです。」

馬鹿馬鹿しいとあからさまな態度を見せるが有紗は内心もっともな理由が出来て良かったと1人安堵していた。

「こっちは女子力低下させまいと必死なんですよ。なのに周りに独身男がいるだけでありもしない噂をたてられて本当に迷惑してるんです。男の方が粘着質の高い噂流すってどういうことですか、鬱陶しい。」

「それに関しては同感だわ。」

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