私は彼に愛されているらしい2
「いいじゃない守られとけば。若いんだし、そう言ってくれる人がいるうちが華よ?」

「でもなんか面倒くさいです。」

「か弱いフリしてりゃいいじゃないの。」

でも、そう言おうと口を開いた瞬間、有紗の言葉を遮るように割と低めの甘ったるい声が割り込んできた。

「そうだよ~。きみは強いから手に負えなさそうって言われてこの前へこんでたの誰だっけ?」

「あら、君塚くん。」

「げっ…。」

語尾に癖のある口調で舞と同じく有紗にとって職場先輩の君塚が仲間入りをする。

キラキラしたオーラを背負ったように見えるのは背景の蛍光灯のせいではなかった。誰もが唸るイケメン。そんな最強の肩書を下げた君塚に有紗は歓迎しない声を漏らす。

普段からこの口調でからかわれることの多い有紗にとって、嘘臭いその爽やかな笑顔は嫌な予感を引き出すのだ。やはり思った通り甘いマスクでゆったりと毒を吐く君塚の言葉はさらに続くらしい。

どうにも出来ない状況に変な緊張感が生まれ、有紗の背筋はゆるやかに伸びてその時に備えた。

「その分じゃ、有紗のか弱い女の子計画!は失敗だねー。」

「わーっ!」

ミゾオチへの一発相当だ。

気持ち悪くなるどころか妙に可愛さを生み出す君塚のぶりっ子動作に衝撃を受けつつ、有紗は彼の言葉に今日一番の強い反応を示した。

何てことだろう。

悪気なんかこれっぽっちもありませんオーラを出しながら君塚はあっさりと有紗の秘密をバラしたのだ。

「ダサッ!そんな計画立ててたの?」

「秘密って言ったのに!!」

顔を赤くしながら君塚に食って掛かっても最早空しいだけ。半泣き状態で有紗は腰を浮かせ、行き場のない手と不満が渦巻く心の中ではグルグルと汚い言葉が吐き出されている。

< 4 / 304 >

この作品をシェア

pagetop