私は彼に愛されているらしい2
「大輔。」

「うん?」

「なんで私なの?」

また本を読む体勢に入った大輔は有紗の言葉に顔を上げて反応を示す。

虚ろながらも真剣に答えを求める有紗の視線はまっすぐ大輔を射ていた、その気持ちに応えるべく大輔も広げていた本を閉じて考えるように宙を仰いだ。

「それが自然だったから。」

もっと具体的なことを言ってもらえるかと思っていた有紗は思わず目を大きくした。

「今まで付き合った人と長く続かない理由を考えた時に気付いたんだよ。俺は無意識に有紗と他の子を比べてたんだって。だから有紗に行きつくのは俺の中では自然だった。…でも有紗にしてみれば急な話だろうけどな。」

心の中で反論していた言葉をそのまま言われ、有紗は声を詰まらせる。その反応こそ図星だと捉えた大輔は苦笑いして手元の本をまた開いた。

「言われる方はいつも突然だ、その反応は仕方ない。でも多分、俺の中ではずっとあった気持ちなんだろうなと思う。ずっと友達やれてる時点でお互いに好意があるのは確かなんだしな。」

「そうだね。」

「はは、だろ?」

ほとんど独り言に近い言葉に同意してくれたことが嬉しくて大輔は思わず笑ってしまう。その姿につられて有紗も柔らかく微笑んだ。

「高校んとき同じCDをお互いに貸そうとした時は笑ったな。」

「私が買ったCDと同じものを大輔も買って、しかも私が大輔に貸そうと思って持っていった同じ日に大輔も私に貸そうと持って来てたんだもんね。」

「双子かって言われたな。」

「そうそう。」

「頼んだメニューがかぶったり。まあ有紗とはよく波長があってたな。この本も俺が読もうと思ってたやつだ、こっちはこっちで楽しんでるよ。」

盛り上がりそうな会話を打ち切るように大輔があっさりと話を終える。

「もう寝ろ。今日の俺の目標はここにある本を読み倒すことにした。」

「なにそれ。」

もう有紗と目を合わそうとしない大輔は意識を手元の本に集中させているようだった。しかしそれはわざとしている姿で有紗に気を遣わせないようにしたことなのだと有紗は気付いている。

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