私は彼に愛されているらしい2
「いいよ。いまゆっくりして治してもらわないと来週の合コンキャンセルになっちゃう。私にはそっちのが痛いわ。」

「…なるほど。」

優しさなんだかしたたかなんだか分からなくなって複雑な気持ちで納得の声を漏らす。

すっかり忘れていたが来週の土曜に千春主催の合コンが入っていることを思い出して頭が痛くなった。しかも自分から言い出したものでも手を挙げて参加を申し出たわけでもない、千春からの強引な誘いによって設定されたものだから余計に気が重かった。

そして今日の約束も来週に備えての買い出しを兼ねていたような気がする。コンパ用とか関係なくショッピングは好きなので出かけられないのは素直に残念だと小さなため息を漏らした。

「仕事忙しいんでしょ?今日はゆっくりして明日からに備えてよ。」

「そうする。また買い物行こうね、千春。」

「もちろん!ランチも次の楽しみにとっておくわ。」

「ふふ。やった!」

「じゃあ、また土曜にね。何か欲しいものがあったら連絡ちょうだい?」

「ありがとう。」

突然の断りに嫌な顔せず受け入れてくれた千春のやさしさを噛みしめて有紗はまたベッドに横たわった。ふと気になり携帯の設定を確認すると完全サイレントのマナーモードに設定されてることに気が付く。

無意識の内にしたのだろうか。

しかし仕事中でも必ずバイブ状態で無音状態にすることはない。その場合は電源そのものを切ってしまうからだ。

「何でだろ。」

そう呟いて視線を動かすとローテーブルの上にメモが目に入り有紗は体を起こした。そこはさっきまで携帯が置かれていた場所だ。

そういえば何故そこに置いてあったのかも覚えがない。

「…大輔?」

心当たりは彼しかいなかったがそれはメモを読んで確定に変わった。

「悪いと思ったけど勝手に携帯の設定を変えといた。後で直しといて。」

それは見慣れた大輔のきれいな文字、おそらく大輔は鳴り続ける携帯を気にしてサイレントにしてくれたのだろう。千春からのメールや着信はもちろん、それ以外にも何件かメールが来ていたようだ。

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