私は彼に愛されているらしい2
「まだ抵抗するってか。」

背筋も凍るような温度の低い声を漏らしたかと思うと大輔はとんでもない行動に出たのだ。

「えっ!?ひゃあっ!!」

有紗が踏ん張る為に足を開いていた、その間に大輔の右足が差し込まれさらに物理的距離を縮められる。

大輔のつま先が壁にあたっているだけで有紗にはどこも触れていない。しかし思いもよらない行動に有紗はパニックに陥った。

「ちょ…っ!」

インナーパンツが付いているとはいえフレアスカートはちょいミニ丈、慌てて裾を伸ばそうと両手を伸ばすが目の前には大輔の顔があって思うように前屈みになれない。

膝を曲げて回避しようとしても大輔の足が邪魔してこれ以上屈むことが出来なかった。

うそうそうそうそ!

頭の中に余裕なんて一切ない。短い言葉で自分の感情を吐き出すのに精一杯だった。

直立したまま伸ばせるだけ手を下にして裾を押さえる。半泣きになりながら有紗は懸命にその状況に耐えた。

別に大輔の膝が迫ってくる訳でもないのに、自分の足の間に大輔の足があるのだと思うとそれだけで恥ずかしい。

無理無理無理無理ムリムリムリムリ!

1秒でどれだけ言えたか分からない速さで防御壁を作るように胸の内で叫び続ける。

「これでも友達だって言える?」

大輔の声が耳に入ってきても身を固くしている有紗には何も答えられなかった。

「これって友達の距離?」

少しだけ大輔が近付くたびに目を固くつむって顔を逸らす。そして小刻みに首を振りながら首をすくめて懸命に耐えた。

「俺だって男なんだけど。」

そう耳元で囁くなり大輔は体を引いて距離を取った。

解放された有紗は重力に従う様に力なくその場に座り込んでしまう。見下ろす形になった大輔は眉を上げて意地悪そうに笑みを浮かべた。

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