私は彼に愛されているらしい2
「俺と比べた?」

比べた。

少し時間がかかったがその言葉に先週の大輔の台詞を思い出す。

どんな女性と付き合っても長く続かなかったのは無意識の内に有紗と比べていたからだと大輔は言っていた。それを受けて有紗も今日の自分を振り返る。

第1印象はテンションの高い男という事でもうダメだった。

そして服装も趣味が合いそうにない、話し方も合いそうにない、何より高圧的な態度が気に入らない。

全然楽しくない。

もっとゆっくりと気楽に話せる人がいい。

気負わずに自分に似合う服を着こなせて、馬鹿な話も少し難しい話も同じ様に出来て、寄り添えて、それでいて尊敬も出来る人がいい。

そう。

「…比べた。」

大輔の様な人がいいと、有紗自身も無意識の内に比べていたのかもしれない。

そんな考えが浮かんで有紗は目から鱗が落ちたような感覚に陥った。

なんてこと。

「そっか。」

ふわりと優しい笑みを浮かべ、そしてまた当然の様に繰り返されるキス。

遠慮を無くしたのか1回では終わらずに何度も何度も味わいながら深くなるキスが甘い。

「なんで…キスするの?」

「んー?自分でやっといてなんだけど壁ドンしたら俺も盛り上がっちゃってさ。」

「だからって…。」

基本的に有紗に話す隙を与えないキスの嵐は会話を途切れさせる。

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