ノスタルジア~喫茶店を訪ねて~

⑤子どもの願い

 やっとの思いで、私は、私の体に入っている少女の幽霊を、私の家に帰らせた。帰る道すがら、少女の幽霊は私が見えるらしく、私にいろいろと話してきた。当然だが、他の人には見えないので、そんな私の姿を訝しげに、避けていった。
 そのおかげで少女の名前は、鈴木聖美ちゃんという事がわかった。
 あの時聖美ちゃん曰く、私が聖美ちゃんのほうを向いていたら、車が曲がってきて、助けようとして私の体を引っ張ったらしい(私は、聖美ちゃんが入ったと思うのだが)。
 結果的に聖美ちゃんは、私の命の恩人だ。けれども、そのせいで聖美ちゃんが私の中に入り、私が押し出されるように魂と体が分離してしまったのだ。
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