ノスタルジア~喫茶店を訪ねて~
「なんか,意外だよね。自殺するような人には見えなかったよね」
「そうかな」
 先生は、確かに面白い人だった。人柄の良さから、生徒から人気があった。
 でも私は知っている。部室で見せる先生の、もの悲しい表情、寂しそうな瞳を。
そんな先生が、愛おしくて仕方がなかった。
 友人は、ぐらつく頭で、急に何か思い出したように、私を見つめた。
「先生って、好きな人がいたらしいよ。しかも私たちの学校関係者で。でも誰だとは、分からなかったし、先生も否定していたし・・・」
 汗がじっとり、首筋に流れた。
駅で、友人と別れ、電車に乗った。休日の少し空いている車内に、空いている席を見つけると、私は座った。
 目を閉じて、あの日の出来事を思い出していた。
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