貴方からの卒業証書。
優那が向かった先は図書室。入口で深呼吸をしてから扉を開くと、優しい声が聞こえてくる。

「優那ちゃん、いらっしゃい。この前の本、返却されましたよ」

今年の四月。新たにやって来た司書の先生は優しい笑顔をしている男の人。名前は竹本陽輝。
本と歴史が大好きなオタクらしく、それを知った多くの生徒はGWを過ぎると来なくなり、図書室に来るのはいつものメンバーだけになった。
三年生は優那と陽菜、そして……。

「たけもっとちゃんー。頼んだ本、持ってきてくれた?」

この男─志摩貴大(シマ タカヒロ)。幼なじみの腐れ縁な奴。

「ありますよ。志摩くん」

貴大はそれを貰うと直ぐに貸出手続きをする。

「ありがと。優那、ご飯あるから家に来いだって」
「うん。わかった」

家が隣同士で、優那の両親が共働きである為、一人で食べるよりも楽しい貴大の家で食事をするのは日常的なこと。
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