World Walker
まぁ確かに、こんな山中に人など来たりはしないか…。

やや躊躇はあったものの、りせはプリントTシャツとホットパンツ、ショートブーツを脱ぎ捨てて一糸纏わぬ姿になる。

細い足首を湯につけると。

「お…ちょっと熱め」

しかし山道を歩き続けた疲れが癒されるような、そんな適温だった。

「いい湯であろ?ほれ、よければこれを食え」

肩まで湯に浸かった女性は、ザルに入った卵をりせに差し出す。

「温泉卵じゃ。熱いから気をつけろ?後で山菜の鍋や筍、鮎の塩焼きも振る舞ってやろう」

ニンマリ笑う女性。

こんな山奥だというのに、至れり尽くせりだ。

「アンタ…ここに住んでるの?」

ふとした疑問をぶつけるりせ。

「いんや、わらわの寝床はここではない。この冬城(とうじょう)の町から少し奥にいった所にある、山の中の古寺じゃ」

寺住まいとは。

巫女や神主ではなさそうだが…一体何者なのだろう?

< 129 / 456 >

この作品をシェア

pagetop