World Walker
虫の鳴き声、枝や葉の擦れ合う音、野鳥の呻くような声。

森林浴やマイナスイオンとは程遠い陰気な雰囲気が、この森には漂い続けている。

方向音痴の気があるりせには、少々難儀な場所であると言える。

だが、彼女は旅立ちの前にマー君から幾度となく話を聞かされていた。

…それがどこにあるのか、詳しく知る者は誰もいない。

ただ、常人では近づけないような、暗く昏く霧深い、昼も尚漆黒の闇夜のような森の中に、ひっそりと存在するのだという。

知らす足を踏み入れてしまう者。

知りながら敢えて踏み込む者。

どちらかを問わず、『それ』は客人をもてなすという。

狂気と、惨劇と、恐怖という名の宴を以って。

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