先生の秘薬
「・・・ねぇ。
 どうして逢坂のこと
 調べてるの?
 生徒で逢坂を
 よく言う人なんて
 もうこのあたりには
 いないよ。」



「・・・そうですか。」



「私たちもさ、
 まるごとあの記事を
 信じているわけじゃないけど
 和香の筆跡の遺書まで
 残ってるとあっては
 誰も逢坂を信じないと思う。
 和香はそれだけみんなに
 好かれていたし
 影響力もあったから・・・。

 きっとあなたたちも
 生きてる和香に会えば
 きっと好きになってたよ。
 私もつらい思いしたけど
 それでも和香を
 嫌いになれないのは
 陣之和香がそれだけの
 価値のある人間だったって
 ことだから・・・。

 ・・・そろそろいいかな。
 事件のことは
 私もよく知らないんだ。
 私もかなりショックが
 大きかったからさ。
 まだ引きずってるとこ
 あるんだよね。」


悲しそうに微笑む春木さん。


「つらいことを思い出させて
 申し訳ありませんでした。
 ありがとうございました。」


久遠先生が立って

頭をさげた。


私と栞もあわてて立ち上がり

頭を下げた。


「・・・何か分かったらさ、
 私にも教えてよ。
 いつでもいいからさ。」



「はい、お約束します。」



久遠先生は

やさしく微笑んで

春木さんにそう言った。


春木さんは

軽くうなずいて

外へ出て行った。


私たちも出してもらった

牛乳を飲んで

その場から出て行った。


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