先生の秘薬
私の右肩あたりから



胸の谷間のあたりまで続く




大きな傷。



逢坂先生は

何も言わずに

その傷を見たあと、

またあの悲しい顔をして

私の近くに歩みよった。



「もう・・・
 わかったから・・・。」



そう私に言って

逢坂先生は

指導室を出て行った。



久遠先生は

背をむけたまま

少し左下を見るように

うつむいている。



「久遠先生。
 見ないんですか?
 私の泳がない理由。」



「・・服を・・
 服を着なさい。」



私はTシャツを

着ることにした。


そしてシャツをとり

手を通した。



「もうあとボタン
 止めるだけ
 ですから。」



そう久遠先生に言った。



久遠先生は

ゆっくりと私の方に

向き、私に歩みより

私を抱きしめた。



「ごめん。
 つらいことを
 させる結果に
 なってしまって・・。

 けど・・
 もう少しだけ・・
 自分を大事に・・・」



久遠先生


泣いてる・・??




久遠先生は

私を抱きしめたまま

私の耳元で

少し震えたような声で

そう言って

私から離れ

指導室を出ていった。

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