あの時も、これからも
この温もりが当たり前すぎて

失うことなんて考えられない

失ったら?なんて仮定すら怖くてできないほどに

でも自分から「結婚しよう」なんて言えるほど自分は現実的じゃない

プロポーズは海斗からがいいなんて夢見ているから

最近どうなるんだろうって不安になる

ぎゅっと海斗の手を握る

海斗はその握り方から何かを感じ取ったのか、まるで「大丈夫」というように優しく握り返してくれる

きっと暗くて少しうつむいているしるふの顔は海斗からは見えない

もし、この手を離さなくちゃいけなくなったら自分は笑っていられるだろうか

それでも私を心配する海斗を安心させることができるだろうか

そこまで自分は強くなれただろうか


その時はまだ知らなかった

多分、史上最大にして最強の壁が待ち受けていることに

この温もりを手放さなきゃならないことに

その時の私たちは、私は、まだ何も知らなかったんだ


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