もうすぐ夏なので怪談話でもおひとつ
 わたしも、どこかの湖の傍の民宿に泊まった夜。

 室外機のブーンブーンという音に混じって、男がブツブツ呟く声を聞きながら寝ていました。

 誰も騒がないので、空耳だろうとタカを括っていたんです。

 そのうちに、誰かが、「ねぇ、男の人がブツブツ言ってるの、聞こえない?」と、聞いてはいかん事をついに聞いてしまいました。

 部屋はパニック。

 蜘蛛の子を散らすように部屋から逃げ出すルームメイトたち。

 寒い冬のこと、わたしは布団から出ることも煩わしく、ブツブツを聞きながら皆が帰ってくるのを待っていました。

 そのまま別の部屋に転がり込んだ子が多数出ました。

 戻ってきたのは、わたしといつもツルんでいるメンツでした。

 彼等はみな、霊感があって、この程度は慣れているとのことでした。


「へー、怪奇現象ってこういうのを言うんだ。」

 友人の一人は、家の中で勝手に扉が開いたり閉じたり、割れるような音や足音がすることを、どこにでもある事だと思っていたそうです。

 そんなヤツが居たことの方がびっくり。

 ブツブツ言ってるだけで何もなかったので、そのまま就寝して終わりでした。
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