もうすぐ夏なので怪談話でもおひとつ
 友人の家にクラブの仲間たちでお泊りした時のこと。

 なんやら家の中の気が悪い。

 けれど、その頃にはもう霊能者の先輩も卒業していたので、原因解明は出来ませんでした。

 家を見れば、だいたいのところは解かるのですが、玄関を入って階段を上がっても何も感じなかったんです。

 なのに、友人の用意した広間の空気だけが、なにやら淀んでいる。

 へんだなー?と。

 で、原因はどうやら剥き出しのままの鏡台みたいでした。

「この鏡台って、何か曰くある?」

「え? それ、死んだおかんのやけど?」

 うわぉ。


「えっとなぁ。カバーとか、ないの?

 鏡の部分に被せるヤツがあると思うけど。」

「あー、そういえばそんなんあったなぁ。どっか行ったけど。」


 おかんはきっと几帳面な人だったに違いない。

 この鏡は剥き出しで置いとくもんじゃない、と強く感じました。

「なんでもええから、タオルでもなんでもええから、蓋しとき。」


 おかんは琴を奏でる雅な趣味も持っていたそうで、形見だというお琴も見せてもらいました。

 想い出話をしんみりと聞いて・・・。

 カバーをしておけと、テキトーな理屈をでっち上げて説得しましたが、きっと死んだおかんの意向だろうなと思うんですよ。
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