禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
「ヨーク将軍、例の物はやはり見付かりませんでした」
先程とは違った兵が、馬に跨がったヨークの元へ報告に来た。
ヨークは長い黒髪を後ろで束ねながら
「まーたムダ足か。たまんねえなあ」
と気だるそうに溜め息をついた。
「こんなの、デュークワーズ中しらみ潰しに探していったら俺ぁジジイになっちまうぜ」
眉間に皺を寄せて空を仰いだヨークの視界に、一羽の黒い鳥が羽ばたいて来るのが見えた。
鳥はヨークの頭上で一回りするとやがて彼の肩に降り、奇妙な声で小さく鳴いた。
それを耳に捕らえたヨークの顔色がみるみる変わる。
「ははっ!言ってる側から早速見付けやがったか!!ったく散々手間取らせやがって!」
高揚した顔に悦びを滲ませながらヨークは兵達に向かって叫んだ。
「おい!捜索は止めだ!!
例の物が見つかった!城だ!デュークワーズの城に向かうぞ!!こんなチンケな村に構ってる暇はねえ!」
兵を引き上げ馬を走らせながらヨークは屍を越えた。笑いが堪えきれず口から零れる。
―――やっと、これでやっと二つが揃った。後は…生きたパンドラの鍵“聖女”だけだ…!
村人の屍を大馬の蹄で砕きながら、ヨークは大声をあげて笑った。