禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~


けれど、アンはどの誘いもすげなく断った。

もちろん、聖乙女となるアンが本気で男と付き合う事が無いのは皆分かっている。

しかし、一緒に町を歩いたり一緒に茶を飲んでお喋りぐらいしてくれてもいいだろうと、男達はアンに刹那の憩いを求めたが、アンがそれに応えてくれる事は無かった。

「アン殿は活発な割にお堅いなあ、若いのだから少しぐらいは楽しんだっていいだろうに」

「さすが聖乙女候補と言うべきか。まあガーディナー伯爵は厳しい事で有名だしその辺は貞淑にしつけられたんだろ」

「お転婆なんだか貞淑なんだかよく分からんな」

アンにフラれた男たちがそんな話を交わしているのを、廊下ですれ違ったミシュラは聞きながら思案にくれていた。



< 64 / 271 >

この作品をシェア

pagetop