スイートペットライフ
***

「ミィ、明日は久々におでかけするよー!」

金曜、マンションに帰るといきなり大倉さんが宣言した。

「あの、どこに行くんですか?」

とりあえず着替えに行く前に聞いておく。

「いいところ、いいところ。ふふん。この間のミィの“やきもち記念”におでかけしよう」

その“ふふん”が怪しすぎてどうにも素直に喜べない。

それに“やきもち記念”って何?

「早く手を洗っておいで。ご飯食べよう」

ギャルソンエプロンの大倉さんが今日もにっこりと笑った。

――翌日

朝早くからキッチンからいいにおいがする。それに誘われて目が覚める。

「おはよう」

朝からさわやかスマイルで挨拶される。

「おはようございます。お弁当ですか?手伝いますよ」

そう言って私もキッチンに入っていく。

「じゃあ、おにぎり握って。そこに具準備してあるから」

そう言われてカウンターを見ると、しゃけ、たらこ、こんぶ、シーチキン、おかかが並べられていた。

「三角にしますか?それともお弁当に入れるなら俵型にしますか?」

「そーだね。俵型にしてもらおうかな」

そんなやり取りをしながら、手際良くおにぎりを作る。

「ミィ案外おにぎり上手だね」

褒められて嬉しくなる。

「思ってたよりも器用でしょ?」

得意げに言う。

「今日はミィが握ったおにぎりを食べられるなんて感無量だな。これは【ミィ飼育日記】にきちんと書いておかないと」

「飼育日記!?」

「そうそう、大事なミィとの時間を綴る“愛のメモリー”だよ」

絶句。もう絶句するしかない。

「あの、私着替えてきますね」

そう言って、キッチンを後にした。
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