スイートペットライフ
「そうです。私が諏訪君と飲みに行ったりするのが気にいらないからって職場での私の動向まで把握して監視するためでしょ?」

「ミィ!監視だなんて人聞きが悪いよ」

大倉さんがソファから立つ。

「だって、そうとしか考えられません。昨日の今日なんて……」

「僕はミィの仕事ぶりが見たかったんだ。飼い主としてペットの状況はどんな時でも把握しておきたいんだよ」

至極正論のように熱弁しているが根本的な何かが違う気がする。

「もう、ペットペット言わないでください。あなたにとってはただのペットかも知れませんが私はちゃんとした24歳の女の子なんです!」

「ちゃんとわかってるよ」

私の言いたいことが分からないみたいで大倉さんが困った顔をする。

「いいえ、分かっていません。普通の24歳の女の子は恋もするんです。それが普通なんです。それを“飼い主”だって……。旦那様や彼氏じゃないんです。“飼い主”はペットの恋に口出しする権利なんてないんですよ」

私は怒りにまかせて一気にまくしたてた。

その様子に大倉さんは驚いて目を見開き、私を見つめ呟いた。

「“飼い主”には権利がない?」

まるではじめて気がついたかのような言い方。その態度にもイライラが募る。

「そうです!大倉さんはただの“飼い主”なんですから、私の恋に関しては干渉しないでください!おやすみなさい」

何か言い返され、まるめこまれてはいけないと思い、“おやすみなさい”まで言いきって寝室に逃げ込んだ。

部屋のドアを閉めると、ベッドへとダイブした。

言いたいことは言った。間違ってない。

―――だけど、大倉さんの最後の、あの悲しそうな表情が目の裏に焼き付いて離れない。

それが思い浮かぶ度、胸の奥が“ツン”と痛む気がした。
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