スイートペットライフ
21. 愛のK点越え
バタンと所長室のドアが音を立てて閉まる。
 
私が放心状態で廊下へ出ると、大倉さんと諏訪君が話をしている姿が目に入った。

「すみません、少しお時間よろしいですか?先ほど青木のこと“ミィ”って呼んでましたが、あれはどういうことですか?」

そう言えばそうだ。あわてていてそこまで頭が回らなかった。

「そんなことよりも、君は本当にミィの事好きなの?」

いきなりの質問に諏訪君がひるんだ。

「ど、どうしてそんなこと?」

「好きだったらどうしてあの時ミィを全力でかばわなかった?君の知っているあの子はあんなふうなミスをしたり嘘をついたりする子じゃないはずだ。私が口をはさむ前に彼女を擁護していないといけないはずだ」

「そ、それは……」

「これから、君が彼女を守るんだろう?しっかりしてくれ」

そう言って諏訪君の肩をポンと叩いて、エレベーターへと向かって歩いて行った。

私はそんな二人の姿をぼーっと眺めていた。

すると諏訪君がこちらを振り向いて言った。

「早くしないと大倉さん行ってしまうぞ。お前の好きな人ってあの人だろう。なんだか俺との仲も誤解してるみたいだし。あんなすごいお前への執着見せられてあの人に勝てるなんて到底思えないから――早く追いかけろ」

そう言って私の背中をドンッと叩く。その衝撃で我に返った私は急いで階段へと走った。

ヒールで階段ダッシュはキツイ。でも今はそんなことどうでもよかった。

大倉さんの話も聞こうとせずに自分から離れると宣言したのに、いつまでもあのマンションを離れることができなかった。それに仕事で大きなミスをして会議では随分大変な思いをしただろうけれどそれも一切言わずに疑うこともせずに私を信じてかばってくれた。

――無条件に信じてくれた――

今どうしても彼に会いたい。会わなきゃいけない。自分の気持ちを今ほど伝えたいと思ったことない。
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