最愛~あなただけが~
「米といで、ザルに揚げて水切りして、その米を冷凍してから炊飯器で炊くんだ。
 本当は土鍋で炊くのが一番美味しく炊けるんだけどな。」


 へぇぇ~。
 お粥を美味しく作るコツがあるなんて全然知らなかった!


「私、お粥は冷やご飯からしか作ったことなかったです。
 鷹野さんは、どうしてこの作り方を?」

 美味しそうにお粥を食べる私を、どや顔で見ていた鷹野さんの表情が寂しげに曇る。

「・・・亡くなった母が、まだ生きてる頃教えてくれた。
 俺も、お粥の美味しさに感動して聞いたんだ。
“どうやったら、こんな美味しいお粥が作れるの?”って。
 俺がまだ6歳のガキだった頃の話だけど、忘れられないもんだよな。」


(そっか・・・。)


これは、鷹野さんのお母さんの味なんだ・・・・・



「・・・ありがとう・・・ございます。」

「え?何が?」

「お母様の味を教えてくださって、ありがとうございます。」


 鷹野さんは、私の言葉に優しく微笑んだ。



 この日の夜も、鷹野さんは私が眠るまで、ただずっと傍にいてくれた。







第5章【葛藤】fin.
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