最愛～あなただけが～

（佳･････）


　ぶわっと、涙が溢れた。
　佳が、ギョっとした表情になる。

「どうしたんだよ！？なんで泣くわけ？」


　･･･佳。ごめんね。
　その理由は言えないよ。

　恋人がいるのに、会ったばかりの上司に一目惚れしちゃっただなんて。
　佳の優しさが嬉しいのに、でもこんな自分が申し訳なくて涙が出る･････


「･･･はは～ん。
　璃子、俺の優しさに感動しちゃったんだろー？」

　佳はからかうように言って、私の頭をワシャワシャ撫でた。




　洗面所で顔を洗い、タオルで顔を拭きながら鏡を見る。


（サイアク･･･）


　明らかに疲れが取れていませんと物語らんばかりの疲れ顔だ。


『嫁が』
『子どもの』


　鷹野さんの声で、その部分だけが頭の中にリピートして、鷹野さんに奥さんと子どもがいる事実は、こんなにも私を切なくさせる。


　じわ･･･と、目に涙が滲んだ。






第1章【運命の出逢い】fin.