誠につもる白雪かな
ーside 斎藤ー


厠へ行ってから乾いた喉を潤したくて
井戸へ向かっていた。


そしたら遠目からでもわかる
偉人のようなあいつが何かを探すように歩いていたから声を掛けた。


疑ってるはずなのに、
剣を持つ目...


何かを諦めたような
何もかもわかっているような
そんな視線を浴びると鼓動が高まった。


お前は何を隠している。


何を抱えているんだ。


「なにをしている。」


無意識に睨んでいたであろう俺を見て
驚いたような顔をしたが
すぐに困ったように笑った。


聞けば着物や刀など必需品を買いにいくらしい。


沖田か俺に声をかけるようにと言われたと、あいつは言った。



なぜだかその時



無性に沖田には譲りたくないと思った。



「ならば供をする。」


無意識に発していた。


この感情は疑いからくるものなのか...


もしくは他の何かなのか。



霧のようにスッキリしない感情を抱きながら、俺は山村を連れて町へと足を進めた。
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