ハンバーガー質小井店。

**、は希望しません。


カサカサと音を立てて気持ちの良い春風を運ぶ、樹齢200年の歴史を持つ大木。
その下で幹に体を預けて寝ている彼女。
そっと近づき、スヤスヤと寝息が聞き取れそうな程顔を寄せ、そのプルプルとした可愛らしい唇にキスを一つ落とす。


『――姫。日が傾いて来ました。起きてください。』

彼女に触れないように、そっと声をかける。
気持ち良さそうに寝ている姿に思い出すのは1年程前のこと。
あの時はまだ彼女の年齢は成人を迎える前の13歳で、俺は19だった。


『ねぇ、護。知ってる?お姫様が眠りから覚めない時、王子様のキスで目覚める物語。』

『……』

『憧れるわよね…。姫と言う立場はあっても政略結婚となればそんな奇跡が起こるはずがない。』

『……』

『つまらない人生よね。ねぇ、護?』

『――はい。』

『もし、もしね。私が目覚めなかったらキスをしてくれる…?護だったら奇跡が起こる気がするの。』

『……姫さま、隣国の皇太子がいらしています。』

『……バカ…』


もう少しで成人する彼女は、これから花開く時期。
そんな時期に彼女の心を乱すことは決してしてはならない。
俺の年齢なら結婚して所帯をもっていてもおかしくない年だ。
結婚を考えてはいるが、相手はいない。

この心の大半を占めている彼女の存在はとても大切で、俺なんかが穢すことなんかできぬ存在。



それは1年経っても変わっていない。


『姫は私を置いて行かれるのですね…。』

この1年で彼女は見違える程綺麗になり、女性らしい体つきに。
何年も前から隣国の皇太子の婚約者にと話があり、遂に昨日、正式に婚約が決まった。

姫付きの騎士。
爵位も持たない、ただそれだけの俺は、一国の皇太子が相手で勝てるはずがない。

だから、今日だけお許し下さい。


『貴女を、小秋姫を、心よりお慕いしております。』

例え奇跡が起らなくとも、私の心は貴女の傍に―…


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