無垢・Age17
冬休みの最終日
 冬休みの最終日。
私達は残っていた青春十八切符を使って、又新宿にいた。

西口の先から延びる舗道を歩くためだった。


三元日の雑踏を避けて明治神宮に参拝するためだった。

そのために早めに出発したのだ。
普通電車でないとせっかくの切符が使えない。
だから朝一番早くに到着する電車に乗り込んだのだった。


でもすでに何処もかしこも人でいっぱいだった。


代々木駅のその先に緑の固まりが見える。


「ホラ其処が神宮だ」
アイツの手に力が入る。


「やっと巡り逢えたのに、又離れるのは辛いから」
アイツは泣いているように思えた。
私はロングマフラーを外し、アイツに寄り添いながら二人の首に巻き付けた。


「これが本当の首ったけ。なんちゃって。ちょっと古いか? だってもう離れたくないもん」
私はちょこんと舌を出しながら、アイツの腰回りに抱き付いた。

アイツは大胆な私の行動に驚きながらも、私の体を自分の方に抱き寄せた。


参拝が終わったらラブホ代わりにアイツのマンションへ行く。
本当は契約を解消するためだった。

アイツったら、クリスマスイヴの日に私を追い掛けた以来持ち主に連絡していなかったのだそうだ。


でもその前にロマンチックな一時をアソコで送ろうと思ったのだ。




 バスルームのガラス越しに見えるアイツの手が私を誘惑する。
私は素直にそれに従った。

本当はずっと待っていたんだ。
そんな素振り見せないように気を遣いながら。
だって、アイツに笑われる。
私の気持ち知ってるくせに意地悪なんだ。


タオルで女性の部分を隠し、バスタブの側面に背を凭れた。

私も悪戯したんだ。がっちりガードして。


でもアイツは場所を移動させると、無理やり私の背後に回った。


何時かこの手に取ったアイツの愛用シャンプー。
今、二人の香りに変身する。


アイツの手が私の髪に触れる。
その精細な指先が私の髪を洗い出す。

私は驚いてアイツの手首を掴んでいた。


「辞めてほしい?」

アイツの言葉に首を振る。
でもドキドキが収まらない。
これ以上遣られたら、私は悶え苦しくなる。

それでもそれに耐えようと思った。
アイツの吐息を首筋に感じながら、私は静かに目を閉じた。


「じっとしてて……」
妙になまめかしいアイツの言葉に心臓が跳ね上がった。




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